この記事は2013年02月24日に「こまき無答塾」に書かれた記事「協働で育む「小牧の絆」」を Bing検索のキャッシュ から復元→アーカイブ化したものです(アーカイブ方針



2月22日の午後6時30分から、小牧市役所において、「平成24年度市民まちづくりセミナー 協働で育む小牧の絆」が開催されましたので、受講いたしました。
 同セミナーは小牧市と特定非営利活動法人小牧市民活動ネットワークの共催によるもので、市民・市職員・企業関係者等およそ130名程が参加いたしました。

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 講師は「人と組織と地球のための国際研究所(IIHDE)」代表の川北秀人氏です。川北氏のプロフィールは次の通りです。(パンフレットより)
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 私は、NPOなどの団体に属しておりませんし、協働の実体験もありませんので、私にとっては難しいテーマでしたが、川北氏の講義を聞いて重要だと感じた部分を次に列挙いたします。

★IIHDEの川北氏が感じている最近の変化
 IIHDEの本業は市民団体に対する研修会の開催とのことですが、最近は質的に変化しており、町内会・自治会の連合会などの地域や、企業からの依頼を受けて研修会を行うことが増えいる。
 その背景には、「人口減を前提とした地域づくり(地域活動の事業化)を更に行っていかなければならない」という背景、「企業として社会や世界の課題に対応し利益を出す仕組みを構築しないと、これからの時代は生き残れない(こてを企業のソーシャル化というそうです)」という背景があるのではないか。

★これからのNPOはどうあるべきか
  地域における事業化、企業におけるソーシャル化が進む中で、「NPOは好きな時に好きな事をやっている団体だ」というように見られていないかということを考えなければならない。
 NPOの取組んでいるテーマ(活動)が、地域の人から見て重要なテーマとして共感を得られているかどうか、どれだけの価値や成果を生んでいるかということを地域の人と共有していかなければならない。
 NPOが孤立するのではなく、「協働・連携こそがNPOの存在意義ではなかったのか」ということを再認識する必要がある。
 そのような観点で、NPOは行政との協働だけでなく、市民団体同志の協働についても考えて欲しい。

★小牧市は「協働提案事業化制度」を使いこなすことが必要
 小牧市の協働に係る制度は、全国的に見ても進んでいると断言して良い。しかし、この制度を使いこなせるか、使いこなせないかという点について、小牧市職員と小牧市民の力が問われている
 「協働の腕を上げて行かなければならないという段階である」ということを理解すべきである。
 市の内部組織である「協働のまちづくり実務者会議(家著補佐級職員で構成)」が、市民から出てくるアイディアや提案そのものについて、直ぐ取組むかどうかは別にして、市にとって重要な課題であるかどうかを見極める能力が必要がある。

★協働の必要性と進め方のポイント
地域に力があるかどうかは、その地域のどれだけの人が住んでいるかといった「密度」ではない。
 地域に住んでいる人の交わりの程度である「密度」が重要なのだ。したがって、「人の交わり」をどう上げて行くのかが1つの大きなポイントとなる。

IIHDEが行った長崎市の管理職研修会において、田上市長は「これからの行政職員は、従来の考えを転換して、担当業務の発想の段階から住民の力を借りていかなければならない」「今までの行政職員は一人芝居型の仕事しか出来ていなかったけど、これからはプロデューサー型の職員であるべきだ」と話された。
 それは、住民の高齢化や市の税収が減っていくことを考えると、公共サービスの質も量も維持していこうと思ったら住民と一緒にやろうという風にシフトしていくしかないことを示しているし、そうすることにより、行政職員にとって地域の人たちがは資源に見えてくる。

IIHDEが行った堺市(政令指定都市)の区長・局長・部長&中堅職員対象の研修会において、竹山市長これからのまちづくりを車に例えたら、車の持ち主・車のドライバーは市民であり、市職員の役割はナビゲーターだ」、「いいナビゲータになろうと思ったら、地図を持って座っているだけではだめで、街の中へ出て行って欲しい」と話された。
 これは、これからのまちづくりは、行政が決めて行政が執行するのではなく、まちづくりの主役はあくまで市民だから、行政職員はいいナビゲーターになれるような情報の提供、しかも先回先回りしてして、「これからはこうなりますよ」という職員でなければならない。
 「これまで」と「これから」が違うからこのようなことが言われるようになったのだ。どう違うか、大きく言うと、「日本の経済の状況がこれまでと違う」、「日本の人口構成がこれまでと違う」、「日本のインフラの高齢化が始まった」ということである。

少し先にどういうことが待っているかということが分からないで、いままでやってきたことを漫然と進めるということは企業では絶対に許されない。
 行政も同じことだ。同じことを続けていても同じ価値が出ない。もっと少ないコストでもつと大きな成果を出さないといけないということについて、行政職員は本当に緊張感と危機感を持って欲しい
 それと同時に、地域の人もそのことを分かって欲しい。何故ならば、行政は今までと同じコストで同じことが出来なくなるからである。

小牧市においては、1990年には、9.7人の「生産人口(15才~64才)」で、1人の老齢人口(65才以上)を支えていた。
 それが、2000年には6.4人で1人を、2010年には3.5人で1人をささえるようになってきている。
 さらに、今後は2020年には2.4人で1人を、2030年には2.2人で1人を支えなければならなくなると予測される。
 また、税収の増加は期待できないし、職員数も減少していることからすれば、誰が市長になっても、「これまでのことは出来ません」という時代になる。

持続可能性を地域で維持していくためには、従来の協働という考えを超えて、総働という考えに変えて方がよいと感じている。
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 講義資料より

まちづくりは今の暮らしにとっても重要であるが、将来のまちの担い手である子供たちにとっても重要なことである。
 子供たちが町の凄さに触れる機会を設けること(学校を卒業して市外の町へ行く前にこの街の凄さを体験させること)が重要である。

★講義を聞いての感想
 冒頭に記述いたしましたように、私は協働の経験はありません。強いていえば平成24年度からスタートした「協働事業提案制度」を利用して、1市民として6件の「アイディア提案」を提出した際に、小牧市の協働に対する認識を把握した程度です。
 その時に感じた「制度の課題」「運用の課題」については、当ブログで度々記述して参りましたが、川北氏は「立派な制度が出来たが、それを使いこなせているかどうかの段階だ」と話されました。
 私はさらに、「制度もまだ修理しなければならないし、制度を使いこなす工夫がまだまだ必要な段階だ」と思います。
 
 昨年度の反省を踏まえて、「協働事業提案制度」の改善が行われ、「協働提案公開ヒヤリング」の開催や、アイディア提案型については「まちのかたり場」「提案のブラッシュアップ」「まちあい貯金箱」が設けられるようです。
 しかし、「提案の審査を公開の場で行う」との記述はありません。また、上記の市民活動センターで行われるという「まちのかたり場」についても、「提案者も参加可」という記述内容からすれば、行政も市民活動センターも、私から見れば、まだまだ「上から目線の言葉」を使っていると感じます。
 「一緒にやって下さい」ではなくて、「一緒にやらせてらる」と感じられるような・・・。
 川北氏の今回の講義のポイントは、行政職員の協働に対する意識改革を強調された点だと私は受け止めました。
 そして、地域主権への変革期における、地方自治にとって重要なこの20年近くの小牧市を取り巻く環境(豊かな財政、議会と馴れ合いの市政)による「緊張感の欠如体質」から脱却しないと、小牧市における協働の進展はなかなか難しいと思います。
 川北氏が事例として挙げられた、田上長崎市長や竹山堺市長の話のように、小牧市長にも小牧市職員にも協働に対する再確認が必要なのではないでしょうか。
 ただ単に美しい言葉としての「協働」ではなくて・・・。情報公開の徹底、市民との情報の共有、事務事業の検証に基づく改善等々・・・、魂の入った「協働」にするための前提として、お金をかけないでやるべき頃がらが一杯あるのですが・・・。